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15年経過、わたしのキッチン

  • bongout7
  • 9月12日
  • 読了時間: 3分

更新日:9月21日


当店は9月8日に15周年を迎えることができました。

それもこれも皆々様のおかげです。

この場をもって感謝申し上げます。



とはいえ、9月8日は臨時休業させていただいて取引先の展示会に行っておりました。

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東京、空が狭すぎる。

入道雲も肩身が狭そう。


展示会の収穫はそのうちワインの棚に反映されるでしょう。

会場で100年続く酒屋の2代目というおじいさまとお話したことが面白く、一般的に良いとされているお酒の温度湿度管理を根底から覆す実験的な事をされているとのこと。

100年の歴史に胡坐をかかずに研究し続ける熱意、攻めの姿勢。

うちの15周年など彼からしたらまだまだペーペーの域じゃないかと、背筋を正される思いでした。

かといって、突然うちのパンが前衛的な攻めたものに一新することは無いのでご安心下さい。


八千代の空は広いなー

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雑記


久々の電車移動には、もう何十回も読み返しているよしもとばなな著「キッチン」をお供にしました。

薄くてかさばらないのです。


キッチン2の前半、売れっ子料理家のアシスタントになった主人公のみかげが、その料理教室に通う(おそらく花嫁修業的な目的で)同世代の女の人たちを見て、(以下『』内は引用)


『彼女たちは幸せを生きている。どんなに学んでもその幸せの域を出ないように教育されている。たぶん、あたたかな両親に。そして本当に楽しいことを知りはしない。

どちらが良いのかなんて人は選べない。その人はその人を生きるようにできている。

幸福とは、自分が実はひとりだということを、なるべく感じなくていい人生だ。

私も、そういうのいいな、と思う。エプロンをして花のように笑い(中略)そういうの、すてきだな、と思う。』


と一般に言われる女の人の普通の幸せと呼ばれる形(※本書は1988年刊行である。今もあるし復活させたい政治家が増えている女は家庭の価値観。)に憧れを感じつつも、でもその世界とは全く真逆に死に物狂いで必死に料理の猛勉強をしたアシスタントに採用される前の短かい期間を、至福の夏の台所と称し、


『私はヤケドも切り傷も少しもこわくなかったし、徹夜も辛くなかった。

(中略)手順を暗記するほど作ったキャロットケーキには私の魂のかけらが入ってしまったし、スーパーで見つけた真っ赤なトマトを私は命がけで好きだった。

私はそうして楽しいことを知ってしまい、もう戻れない。

(中略)もうたくさんだと思いながら見上げる月明かりの、心に染み入るような美しさを、私は知っている。』


この全身全霊でのめり込む感じ、〈普通〉のルートとははずれた道に突き進む感じ、二十歳あたりでパン屋とケーキ屋に勤めていた数年とお店を開店する前後がこんな感じだったなあわたしも。

若いって狂気的だし。

もう戻れない。戻る気はない。そんな気持ちがふと懐かしく。


15年前の開店当時、レジを手伝ってくれた幼馴染のお腹にはおよそ2か月後にこの世に生まれてくる子がいて、現在その子は家でお菓子作りに熱中している。

彼女も楽しいことを知ってしまい、たぶん、もう戻れない。




そろそろ気温も落ち着くでしょうし、秋の夜長にワイン飲みながら聴きたいこの曲で〆。




 
 
 

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