バレンタインデーには飽き飽きしているけれど(バレンタインデーについての考察)
- bongout7
- 2024年2月2日
- 読了時間: 8分
更新日:2024年10月21日

明け方の空の、得も言われぬ色彩に朝型人間の喜びを感じる今日この頃です。
1月のガレット・デ・ロワの販売が無事に終了いたしました。
今年もたくさん焼かせていただきありがとうございました。
毎年恒例のお客様も、今年初めてお召し上がりになったお客様も、タイミングを逃してしまったお客様も、来年の1月もどうぞよろしくお願いしたします。
で、2月はバレンタインデーがあるということでガトーショコラを焼くことにいたしました。
まず、バレンタインデーとは3世紀ローマにおいて皇帝クラウディウス2世が、、
と始めるとガレット・デ・ロワの記事ようにハチャメチャに長くなるので割愛いたします。
バレンタインデーにチョコレート市場が最高潮に盛り上がっていたのはおそらく今から20年ほど昔になるのではないでしょうか(もう衰退した体で個人的主観と体験で話します)。
バレンタインデーにチョコレートを贈るようになったのは日本の某菓子店が企業戦略として広めたのが始まりというのは有名な説ですね。
戦後から広がり1980年あたりから一般大衆行事化するに至ったと言われています。
かの有名な「バレンタイン・キッス」(国生さゆり)は1986年に発売。
ヒット曲まで出るほどに誰もが楽しめるイベントとなれば、どの企業も街のお菓子屋も一段と力入れ始め激化していくわけです。
ピークに向かいだしたのは、世紀が変わる数年前からフランス帰りのパティシエたちが次々に日本に戻りカリスマ化、ピエール・エルメなどフランスのパティスリーの相次ぐ日本出店などスイーツブーム隆盛期の流れにのって、新宿伊勢丹でジャン=ポール・エヴァンの日本初出店からのサロン・ド・ショコラの開催が始まったあたり。
「べ、べべべ、ベルナシオンのチョコレートが!パレ・ドオールが新宿で買えるだとおおお!!??」
と若き日にいそいそと伊勢丹に行った覚えがあります。
ベルナシオンは質実剛健系の地味な品々なので当時は並ばず購入できました。
その頃はまだカカオの産地とか、カカオ〇〇%などスーパーで手軽に買えるほどは出回っておらず、ロッテガーナミルクチョコに慣れ親しんで育った田舎者には(ロッテガーナチョコを貶したわけではない。今も食べるしオレンジのパッケージのローストミルク◎)ベルナシオンのチョコレートの華やかな香りや酸味や苦みの複雑でいて調和された深い世界観に雷に打たれたような衝撃を受けたものでした(若くて感受性が強かった)。
年々規模が大きくなり、専門誌だけでなく一般のカルチャー誌など多くの雑誌で特集が組まれるとマニアのみならず一般のお客さんの熱量も異様に高まり、サロン・ド・ショコラは入場制限がかかるほどの人気イベントに。
バレンタインデー時期に開催のサロン・ド・ショコラの成功によって海外のショコラトリーが次々と日本進出、日本の有名パティシエも続々ショコラトリーを開店、大手菓子メーカーやコンビニスイーツの登場とスイーツ飽和状態となり2010年手前くらいでスイーツブームがピークの頂点を超えるのです。
スイーツブームと共に拡大したバレンタインデーの盛り上がりも同時に下り始めます。
付け加えると、スイーツブームの頃の時代背景はバブル崩壊後の就職氷河期にあたります。
社会に繰り出す事も出来ない厳しい現実が突き付けられている反動なのか、「サブカルチャー全盛期」、「好きを仕事に」、「自分探し」、と20代前後の若者は夢見がちな傾向にあったと回想します(漏れず私もその一員)。
今は駄目でもいずれなんとかなるみたいな楽観的な雰囲気もありましたしね。
スイーツは数百円からと割と多くの人が手軽に手に入れられるのに磨かれたショーケースから宝石を選ぶように吟味する幸せで贅沢な時間も得られ、ただおなかを満たすために食べるのとは違う短くも素敵な甘い夢を見れる心を満たす嗜好品 (とはいえ血糖値を上げ脂肪になる)ですからブームになったのも必然だったのかなと。
一般企業に勤める人生の文脈とは違う「好きを仕事に」したい人材が多く集まっていたのもブームを助長した要因になっていたのではないかと推察します(わたしも漏れず助長してしまった一員)。
製菓業界の多くの個人店は家父長制的な男社会だったし労働時間はとんでもなく長く今でいうブラック職場が当たり前なので、働きやすいから労働力が潤滑だったわけではなく、夢見がちな人のやりがい搾取で成り立っている部分がかなり多かったと思います。
2010年前後から今現在にかけて社会状況と世の中の価値観がかなり変化してきました。
「リーマンショックによる不況」、「ポリティカルコレクトネスによる差別偏見の是正」、「あらゆるハラスメントが認識され職場におけるハラスメント防止対策が義務化へ」
関西の有名パティスリーが労基違反で是正勧告を受けていましたが、あれは時代のアップデートができてなく昔のまま労働基準法を無視し続けている店のやり方に異を唱えた従業員がいたから顕わになっただけで、今もああいう店は少なくないと思います。
仕事の性質上味のこだわりが強いほど労働時間は減らせないし、従業員は誰でもいいわけではないのでなんとも、、
わたしの経験当時では個人店のケーキ屋の雇用者は労働契約ではなく師弟関係を結んだと考えているものなので、修行だからと「長時間労働もパワハラも耐えてなんぼだろが!こっちは勉強させてやってる上に給料まで払ってやってんだぞ!ありがたく思え!」(漫画ような嘘みたいなセリフだがこのような事をもっと上品バージョンともっと下劣バージョンで言われたことが何度もある)という発言をする昔ながらの考え方の雇用主は洗脳するレベルでこういうことを繰り返し言って隷属関係を強めてくるので、技術の伝授よりも奴隷的働きを強いられているという状態になれば最新の価値観を備えた雇われる側からしたらやはり問題でしかないんだよなあ。
脱線しましたが、上記の流れから人間関係の変化が起き、スイーツブームと共に過熱しすぎたバレンタインデーはストレスを生み出し、反動で義理チョコを廃止する学校・会社や団体が増えていきます。
バレンタインデー用にチョコレートの大量購入する人口は確実に減りました。
しかしチョコレート販売する側としては死活問題なので、大手メーカーなどが学生世代向けに友チョコを強く押し出すようになります。
が、チョコを贈り合い続ける友情というのも学生時代が終わればそう続かないので、長年の不況もあいまってついにはバレンタインデーは自分だけのためのご褒美として自分用チョコレートを購入する最終形態へと至ります。
他人に差し上げることから始まったはずなのに、自己完結。
行きついちゃったので更なる進化はないでしょうたぶん。
あるとしたら揺り戻しでまた本命チョコをあげるのが主流になるとこから再び始まるかもしれない。
ブームは繰り返されますから。
当店は開店初期(たぶん5年目くらいまで)はそれなりにバレンタインを盛り上げて売り上げを上げよう!という商売っ気を出しており、ブラウニーを大量に焼いていたんです。
まだ義理チョコを配る文化があったので。
しかし、こういう斜めに見るひねくれた人間なのでなんかバレンタインデーという行事に飽き飽きしてきちゃって虚しくなっていやになっちゃってやめまして。
でもバレンタインデーは関係なくただ単にチョコレートは好きなんです。
だからたまにはいつもと違う商品も焼きたいし、お客様からしてもつまらない店になってしまうしなあと、バレンタインデー用にガトーショコラを焼いてみたのが2018年と2019年。
ただ困ったのが、パンの製造と並行して作業は出来ず、完全に分離させないと作れない工程を経るので、通常より1時間早く仕事を始めないと開店に間に合わないのです。
あまりにも毎日眠すぎるためやる気と体力が続かず、翌年からはコロナ禍でバレンタインデーどころじゃないだろうという思い込みもあり3年バレンタインデーをスルーしました。
しかしやっぱり食べてもらいたいなーと思いまして、今年のバレンタインデーは4年ぶりにガトーショコラ焼いております。
やっと本題。
1時間も早出しないとできないってどんだけの工程だよ。とお思いでしょう。
別立てのスポンジケーキの焼き方を御存じの方はイメージが出来るはずです。
チョコレートなどを湯煎で溶かしながら、卵黄を泡立てながら、卵白を泡立て、それぞれが良い状態となる瞬間を捉えて順々に合わせて、粉を合わせて、型に流して、オーブンへ。
もちろんその前後には計量と下ごしらえ、洗い物があります。
ミキサーを回しだしたら全て流れるように工程を進めなくてはならず、手を離せる瞬間が皆無なのです。
そのため作業工程を捉えた画像は一切ありません。
撮影の挑戦はしたのですが、スマホを構えている間に泡が死ぬ!と思ってやめました。

4年のブランクがあるとはいえまずまずの焼き上がりとなりました。
中はこのようにしっとりと焼き上がっております。

泡立て命のガトーショコラなので、粉が少ないのに泡の力でふっくら立ち上がっており、くちどけがとても良いです。
15㎝の丸型を6等分にカットし販売いたします。(324円税込み)
ホールでご入用の方は前日までにご連絡お願いします。
バレンタインデーまでの製造としてますが、当店13日(火)14日(水)と定休日のため12日(月)までを予定しております。
(材料多めにとっているので、それ以降は余裕のある時に焼くことになると思います)
先月末に入荷したての福笑屋のコーヒードリップバッグがたくさんございますので、ガトーショコラと合わせてぜひお召し上がりくださいませ。

ガトーショコラに合わせるならハウスブレンドが寄り添うと思いますが、
もしも、ガトーショコラにゆるめに泡立てた生クリーム(乳脂肪35%がお勧め)を添えて召し上がるならばマンデリンがピリッと引き締めていいと思います。
〆はこちら
年にたった1日のバレンタインデーですら嫌になっちゃうわたしもいれば、
everydayがバレンタインだぜ~って歌い舞い踊る人もいる。
これが世の中の面白さですね。
岡村ちゃん最高だなあ。スターだなあ。
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