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赤い初夏の味

  • bongout7
  • 2024年7月5日
  • 読了時間: 4分

更新日:2024年8月16日


世界が強烈に暑くてわたしはもうバテています。

農作物もいつも通りに育つという事が困難になっているようです。

そんな中、生育が悪くて出荷時期がいつもより遅れながらも農家さんは育て上げ届けてくれました。

この真っ赤で立派なルバーブを。

長野県は信州八ヶ岳山麓の畑で育てられました。

段ボールを開封する瞬間にヒヤッと爽やかな空気が溢れだし(クール便だったからだけど)、

そこの空気はおいしかったかい?景色は美しかったかい?と尋ねてみたくなるもので。


生の状態は筋が硬いセロリといった感じ。

かじってみるとセロリより硬くレモンのようにすっぱいのです。


ザクザクと刻みます。

こちらにグラニュー糖をまぶして水分が出てきたら鍋で煮ていきます。

きゃらぶきでも煮るのかな?って見た目ですけれども、

きゃらぶきと違うのは煮るととろんとろんになることです。

なんということでしょう。

信じがたいほどのとろとろのとろけ具合です。


例年ですとミキサーでがーっと均一にピュレ状に仕上げるのですが、

今年は敢てルバーブの繊維が目に見えて残る状態で瓶詰めしました。


ルバーブって何?というご質問が多く、セロリみたいな見た目の~~と説明をするのですが、ジャム=果物なのでセロリみたいなのがジャムになるなんてイメージが難しいらしく、セロリぽい繊維の名残がある方がルバーブらしさがわかって良いかな。と思ったからです。

見た目に反して全くこれっぽっちも筋っぽさはないのでご安心ください。


肝心な味はと言うと、とても甘酸っぱいです。

アプリコットみたいな甘酸っぱさにルバーブの懐かしいようなほのかに土臭い素朴な風味。

他に代え難い癖になる美味しさです。


この蒸し暑くてうんざりする気持ちをちょっと爽やかにしてくれる初夏の味。

たっぷり出来ておりますので、どうぞお試しくださいませ。




雑記


先週はこちらの本を読んでました。

近現代の食の変遷について書かれています。


こういう職業に就いているので、食べるって何なんだろうというのを常に考えざるを得ず。


ここ数年、食べるってもっと根源的なものであり、食材は土や水から、様々な土地の気候の元で育てられているという出発点が人々の意識からすぽっと抜け落ちているのでは?と思う事が多々あります。


あまりにたくさんの食べ物がそこらじゅうに溢れているから? それはどうしてなんだろう?

というわたしの疑問に対するひとつの答えがこの本には書かれていました。


戦前~戦後~高度成長期~現代(高度消費社会)という時間軸で、社会状況や政策による食糧事情を人々の胃袋を通して綴られています。


高度成長期を60代以上の人(特に権力側の男性)がやたら崇め奉って再来を願うのもこういう事なのかあ、、と食から社会を見てもキラキラな時代であったことが分かります。


現代は土と人々の距離が離れ、栄養素やカロリーなど記号や数値で食べ物をみる時代。

食べることは優先順位の一番ではなくなり、食べものは生きるための血肉になるものではなく、SNSで承認欲求を満たしたりコミュニケーションのための道具的な認識の人も多くなっている。

確かに。そういう事にモヤっとしてるんだろうなわたしは。


今年の春に紫綬褒章を贈られた俳優の段田康則さんがインタビューで「米一粒も作れず、世間のお役に立っているとは思えぬ私が紫綬褒章を賜るとは、まさに望外の喜びです。」と語っていて、 米一粒も作れず、この感覚だよ、、この感覚忘れちゃいけない気がするよ、、と噛みしめたのを思い出しました。



最後に、俵万智著「アボカドの種」より二句を引用させてもらって〆たいと思います。

『手間ひまをかけて生きれば甘くなることもあるよと笑う干し柿』


『デパートの地下に並べる富有柿お金で買える甘さあります』



ふむ。手間ひまなどお金で買えない部分の価値に目を向けていきたい、

こういうなんてことない日のなんてことない新川沿いで拝む朝日とかもね、

そんな梅雨らしからぬ夏間近の一考。

素晴らしさみたいなものを価値って言っちゃってる時点でお金が中心の考え方になっちゃってんだろうなあ、、

甘さを好きにじゃぶじゃぶ買えるお金は我が懐にはないんだけど。


さらにほんとの最後の〆に一句

「この手から膨らむパンがひとびとの血肉になる怖さと喜び」ボングー


 
 
 

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